回答者:行政書士 秋間大輔(プロフィールはこちら)
ご遺族様は、ご葬儀の手配から相続手続までの間、何かと忙しいため、故人様のマイナンバーカードがそのままお手元に残っているのは、よくあることですが・・・
「このまま放置すると、法律に違反するのでは?」
・・・と、不安に思われる方も多いと思います。
しかし、ご遺族様には、故人様のマイナンバーカードを返納する義務はありませんので、お手元に置いておいて大丈夫です。 (⇒詳しくはこちら)
むしろ、故人様のマイナンバーカードが「ご逝去後の手続」に役立つことがありますので、しばらくの間は、お手元に置いておく方が良いといえます。 (⇒詳しくはこちら)
「ご逝去後の手続」が完了した後は、故人様のマイナンバーカードを廃棄または返納しても問題はありません。 (⇒詳しくはこちら)
以下、より詳しく説明させていただきます。
1、返納する義務はありません。
1(1)各自治体のサイトに明記されています。
ご遺族様に、故人のマイナンバーカードを返納する義務がないことは、各自治体のウェブサイトに明記されております:
亡くなられた方のマイナンバーカードの返納義務はありません
世田谷区>マイナンバーカードの返納について>手続きの際の注意点
亡くなられた方のカードは失効しますが、返納の義務はありません
大田区 > マイナンバーカードの返納について
カード所有者が死亡した場合、死亡届後にカードは自動的に廃止となるため、返納の義務はありません。
相模原市 > マイナンバーカードの返納について
・・・ほか多数。
1(2)返納義務がないことの法的根拠は…。
マイナンバーカードの取り扱いについては・・・
「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」
・・・という長い名前の法律(通称「マイナンバー法」)と、さらに細かいルールを定めた「施行令」があります。
この「マイナンバー法」と「施行令」では・・・
「個人番号カードの交付を受けている者が死亡したとき」には、マイナンバーカードは「その効力を失う」
・・・と規定されています(施行令 第14条柱書・第11号、マイナンバー法 第17条第10項)。
そして、「交付を受けている者が死亡したとき」(施行令第14条第11号の場合)」は、「施行令」に規定されている「市町村長に返納しなければならない場合」には含まれておりません(施行令 第15条)。
よって、法令上、ご遺族様には、故人様のマイナンバーカードを返納する義務はないといえます。
2、「ご逝去後の手続」の役に立つことも。
故人様のマイナンバーカードは、以下のように、「ご逝去後の手続」の役に立つことがあります。
そこで、しばらくの間は、廃棄・返納をせずに、お手元に保管しておく方が良いといえます。
2(1)生命保険金の請求
保険会社に対して故人様の生命保険金を請求する際、 「契約者」=「故人様」である場合は、(受取人のマイナンバーだけでなく)故人様のマイナンバーを、保険会社の書類に記載するように求められることがあります。
(例:アクサ生命)
この際、お手元に故人様のマイナンバーカードがあれば、裏面を見ればマイナンバーを簡単に確認できます。
2(2)自治体の「おくやみ窓口」での活用
自治体の中には、故人様のマイナンバーカードを「おくやみ窓口」で活用して、ご遺族様の負担を軽減する取り組みをしているところがあります。
(例:「死亡に係る手続きでのマイナンバーカード活用」宮崎県都城市)
このような取り組みは、今後、他の自治体にも広がっていく可能性があると思われます。
3、手続完了後は、廃棄・返納してもOKです。
「ご逝去後の手続」が一通り完了した後は、故人様のマイナンバーカードを、ご遺族様が①ご自分で廃棄しても、②自治体に返納しても問題ありません。
3(1)廃棄する場合
ご自分で廃棄する場合は、大型で丈夫なハサミなどでマイナンバーカードを細かく切断した上で、自治体のルールに従って廃棄してください。
この際、クレジットカードの廃棄方法が参考になると思います:
【参考情報】
SAISON CARD
3(2)返納する場合
返納を希望する場合には、「故人様の最後の住所がある自治体」の区役所・市役所・町役場・村役場に対して返納することになります。
返納の際に必要な書類は、自治体ごとに異なる可能性がありますので、各役所・役場に事前にお問い合わせください。
なお、ご参考までに、さいたま市のウェブサイトには、次のように記されております:
窓口でのご返納をご希望される場合は、
①当該お亡くなりになられた方のマイナンバーカードに加えて
②窓口にご来庁いただく方の本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、資格確認書等)をお持ちください。
(※ 「①」「②」の番号は、回答者が追加したものです。)
さいたま市 > マイナンバーカードの返納について
以上、参考にしていただければ幸いです。
回答者:行政書士 秋間大輔(プロフィールはこちら)