ご遺族様は、ご葬儀の手配から相続手続までの間、何かと忙しく、故人様の運転免許証がそのまま手元に残っているということは、よくあることだと思います。
私のお客様の中にも、
「亡くなった父の運転免許証がそのまま実家に放置してあるのですが、大丈夫でしょうか?」
・・・というように、心配される方がいらっしゃいます。
しかし、結論から申し上げますと、ご遺族様には、故人様の運転免許証を警察に返納する法律上の義務はありません。
ただ、そのまま放置しておくのは、防犯上、好ましくないので、できるだけ早い段階で最寄りの警察署などに返納するのが望ましいといえます。
1、ご遺族様には、故人様の運転免許証を返納する義務はありません。
(1)ご遺族に返納義務がないことは、警視庁や各県警のサイトに明記されています。
例えば、警視庁のサイトには、次のように明記されています:
亡くなられた方の運転免許証については、ご家族の方に返納していただく義務はありません。
警視庁「亡くなられた方の運転免許証について」
(2)ご遺族様に返納義務がないことの法的根拠は?
ネットで検索すると・・・
「ご遺族には、道路交通法の規定に従い、運転免許証を返納する義務があります」
・・・などと記載されているサイトを見かけることがありますが、本当でしょうか?
道路交通法は、「免許証の返納等」について、次のように規定しています:
(免許証の返納等)
第百七条 免許を受けた者は、次の各号のいずれかに該当することとなつたときは、すみやかに、免許証(中略)をその者の住所地を管轄する公安委員会に返納しなければならない。二 免許が失効したとき。」
e-gov 法令検索「道路交通法」第百七条
この条文を一読すると・・・
「故人の免許証は、死亡によって失効したのだから、返納義務があるのではないか?」
・・・と思ってしまいそうです。
しかし、冷静に考えれば、この条文は、免許が失効した際に・・・
「免許を受けた者」本人に返納義務がある
・・・ということを定めた規定だと理解できます。
ご遺族様は「免許を受けた者」本人ではないので、ご遺族様には、故人の免許証の返納義務はないといえます。
2、ただし、そのまま放置するのも好ましくありません。
上記のとおり、ご遺族様には、故人の運転免許証を返納する義務はありませんが、そのまま放置しておくのは好ましくありません。
(1)犯罪者に悪用される危険性があります。
具体的には、まだ有効期限前の運転免許証が盗まれ、変造された上で・・・
- 犯罪用のクレジットカードの発行
- 犯罪用の銀行口座の開設
- 犯罪用の携帯電話の契約
・・・などに悪用される危険性があります。
(2)免許更新の通知が届いてしまう可能性があります。
故人様の運転免許証の有効期限が満了していない場合、「運転免許証更新連絡書(更新のお知らせ通知ハガキ)」が届いてしまう可能性があります。
3、できるだけ早く返納するようにしましょう。
ご遺族様には、故人様の運転免許証を返納する法律上の義務はありませんが、
①犯罪への悪用を防止し、また、
②無用な更新通知が届かないようにするためにも、
できるだけ早く返納するようにしましょう。
(1)必要書類
- 故人様の運転免許証
- 故人様が亡くなられたことを証明する書類(死亡診断書の写し、住民票の除票等)
- 返納される方の本人確認書類(運転免許証等)
(2)返納先
警察署 または 運転免許センター
以上、参考にしていただければ幸いです。