回答者:行政書士 秋間大輔(プロフィールはこちら)
ご遺族様は、ご葬儀の手配から相続手続までの間、何かと忙しいため、故人様の運転免許証がそのまま手元に残っているのは、よくあることですが・・

「このまま放置すると、法律に違反するのでは?」
・・・と、不安に思われる方も多いと思います。
しかし、ご遺族様には、故人様の運転免許証を警察に返納する義務はありません。(⇒1)
ただ、きちんと保管せずに放置しておくのは、防犯上の観点から、好ましくありません。(⇒2)
そこで、不要な場合は、最寄りの警察署などに返納するのが望ましいといえます。(⇒3)
以下、より詳しく説明させていただきます。
1、返納する義務はありません。
1(1) 警視庁などのサイトに明記されています。

例えば、警視庁のサイトには、次のように明記されています:
亡くなられた方の運転免許証については、ご家族の方に返納していただく義務はありません。
警視庁「亡くなられた方の運転免許証について」
1(2) 返納義務がないことの法的根拠は・・・。

道路交通法は、「免許証の返納等」について次のように規定しています:
(免許証の返納等)
e-gov 法令検索「道路交通法」第百六条の三
第百六条の三 免許証を有する者は、次の各号のいずれかに該当することとなつたときは、速やかに、免許証(…中略…)をその者の住所地を管轄する公安委員会に返納しなければならない。
一 免許が取り消されたとき。
二 免許が失効したとき。
三 免許証の再交付を受けた後において亡失した免許証を発見し、又は回復したとき。
四 免許証の有効期間が満了したとき(第二号に該当する場合を除く。)。
この条文を一読すると・・・
「故人の免許証は、死亡によって失効したのだから、免許証を有する遺族には返納義務があるのではないか?」
・・・と思ってしまいそうです。
しかし、この条文の「免許が失効したとき」と併記されている他の事由を確認しますと…
一 免許が取り消されたとき。
三 免許証の再交付を受けた後において亡失した免許証を発見し、又は回復したとき。
四 免許証の有効期間が満了したとき(第二号に該当する場合を除く。)。
…というように、免許証を受けた本人が者が生存していることを前提とした事由に限定されていることが分かります。
そして、道路交通法には、免許証の有効期間満了後の一定期間内に運転免許の再取得を申請する者を「特定失効者」として、運転免許試験を免除するという制度が存在します:
(運転免許試験の免除)
e-gov 法令検索「道路交通法」第九十七条の二
第九十七条の二 次の各号のいずれかに該当する者に対しては、それぞれ当該各号に定める運転免許試験を免除する。
(…中略…)
三 (…中略…)免許証等の更新を受けなかつた者(…中略…)で、その者の免許が(…中略…)効力を失つた日から起算して六月(…中略…)を経過しないもの(以下「特定失効者」という。)(…以下略)
なお、「特定失効者」による運転免許の取得申請につきましては、警視庁のウェブサイトにも説明がありますので、合わせてご参照ください:
以上により、「免許が失効したとき」に免許証の返納義務があるとされているのは…
生存している「特定失効者」が運転免許の再取得を申請する際には、
既に失効している運転免許証を返納すべきである
…という意味だと解釈できます。
よって、ご遺族様には、故人様の免許証の返納義務はないといえます。
2、ただ、放置は好ましくありません。
上記のとおり、ご遺族様には、故人様の運転免許証を返納する義務はありませんが、きちんと保管せずに放置しておくのは好ましくありません。
2(1) 犯罪者に悪用される危険性があります。

具体的には、まだ有効期限前の運転免許証が盗まれ、変造された上で・・・
- 犯罪用のクレジットカードの発行
- 犯罪用の銀行口座の開設
- 犯罪用の携帯電話の契約
・・・などに悪用される危険性があります。
2(2) 免許更新の通知が届いてしまう可能性があります。

故人様の運転免許証の有効期限が満了していない場合、「運転免許証更新連絡書(更新のお知らせ通知ハガキ)」が届いてしまう可能性があります。
3、返納するには?
3(1) 必要書類

ご遺族様が故人の運転免許証を返納する際に、一般的に必要な書類は、次のとおりです:
- 故人様の運転免許証
- 故人様が亡くなられたことを証明する書類(死亡診断書の写し、住民票の除票等)
- 返納される方の本人確認書類(運転免許証等)
※ 状況によっては別の書類も必要になる可能性がありますので、あらかじめ返納先に確認してからお出かけください。
3(2) 返納先

警察署 または 運転免許センター
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以上、参考にしていただければ幸いです。
回答者:行政書士 秋間大輔(プロフィールはこちら)

